過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)とは炎症や潰瘍、がんといった器質的な病変がないのにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘、膨満感などが慢性的に続く病気を過敏性腸症候群と言います。
突然激しい下痢に襲われるなど、日常生活に大きく影響がある疾患です。
近年増加傾向にある病気で、機能を改善できれば、症状緩和につながるとされています。

主な症状

主に、下痢型・便秘型・交代型に分けられ、それ以外には腹部膨満感を起こすタイプがあります。
便意異常をはじめ、腹痛や腹部不快感などの症状を訴えます。
腹痛は、突然に強く刺すような腹痛が起こる場合と、鈍い腹痛が続く場合があります。
腹痛が起きた時には便意を伴う場合がありますが、その多くの場合が排便によって一時的に腹痛が解消します。
消化器以外の症状では、頭痛や疲労感、不安感、抑うつ症状、集中力の低下などが挙げられます。
食事によって、また過度な緊張によるストレス症状が原因のため、睡眠中の症状がほとんどありません。
腹部膨満感を伴うタイプでは、無意識におならが出てしまう、またお腹が鳴るなどの症状が見られます。

1.下痢型

1.下痢型突然強烈な腹痛と便意によって、激しい下痢の症状が現れます。
突然起こるため、通勤や通学など交通機関を使用する際の強い不安感を抱くのが大きな特徴で、不安が症状悪化につながるといった悪循環が起こり、そうなると外出が非常に難しくなってしまいます。

2.便秘型

強い腹痛と便秘の症状によって、強くいきんでも排便できないのが特徴です。
便が出たとしても、ウサギの糞のようなコロコロとした少量の便が出るだけです。
腸管の痙攣(けいれん)によって便が停滞することで引き起ります。

3.交代型

上記の下痢の症状と便秘の症状が交互に繰り返します。また、強い腹痛が伴います。

過敏性腸症候群の症状を起こすきっかけ

消化器官機能は、自律神経がコントロールしているので、ストレスなどの心理症状が大きく影響されます。
消化管の運動異常や知覚過敏などの機能障害が原因に多いですが、それに加えて精神的ストレスも症状を起こすきっかけとなっています。また、感染性腸炎から過敏性腸症候群になるケースからも、免疫異常の影響も指摘されています。

過敏性腸症候群の診断

ほかの消化器疾患の症状と似ているため、まず器質的異常の有無を調べます。
ほかの病気でないことを確認し、世界的に標準化されたRome基準に従って判断していきます。
基準改定により、2016年発表のRomeIV(R4)を最新基準として用いています。
病変や血液検査では診断できないので、患者さんから症状やお悩みを聞きながら基準に照らしていきます。

RomeIV(R4)

6カ月以上前から症状がある、腹痛及び腹部不快感が最近3カ月内の1カ月につき少なくとも3日以上を占め、下記2項目以上を満たしている場合に過敏性腸症候群と診断されます。

  1. 腹痛などの症状が排便することで軽快する
  2. 症状の有無によって排便頻度に変化がある
  3. 症状の有無によって便の状態に変化がある

器質的疾患の有無を調べるために、尿検査・便検査・血液検査・大腸カメラ検査を行います。

治療方法

過敏性腸症候群は、突然の便意など日常生活に支障を生じさせてしまいます。
疾患としては重篤なものではありませんが、完治に導く治療方法がなく、気長に治療を続けることが大切です。
当院では、患者さんのお悩みをできるだけ緩和し、症状を改善するよう治療を行っています。
症状緩和に、薬物療法のほか、食事や睡眠などの生活習慣の改善を図っていきます。

1.生活習慣の改善

食生活をはじめ、睡眠不足など不規則な生活、疲労や過度なストレスなど、過敏性腸症候群の症状増悪因子となるものを解消していきます。
大量の飲酒や喫煙、刺激物の過剰摂取なども避けます。
ストレスが影響するため、あまり神経質に考えずに、少しずつできることから改善していくことが大切です。

2.運動療法

ウォーキングや早歩きでの散歩、ジョギング、ストレッチ、水泳などを習慣化し、血行を改善していきます。
腸の働きを正常にし、整えていきます。

3.薬物療法

日常生活に支障をきたす、急な便意や強い腹痛などの症状がある場合は、薬物療法を用います。
下痢や便秘に有効な薬剤によって、症状を緩和させていきます。患者さんのお悩みに留意しながら処方を行います。深刻な症状によっては、短期間の抗不安薬や抗うつ薬の処方を行うことがあります。
市販薬では効果を得られない症状にも有効な新しい薬剤や、漢方薬、乳酸菌、乳酸菌製剤などの処方も行っています。
症状緩和を目的にご希望やご要望がある方は、遠慮なく当院にご相談ください。

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