ピロリ菌感染

ピロリ菌とは

ピロリ菌とはピロリ菌は、胃の表層を覆っている粘膜に生息する菌です。
住みついたピロリ菌をそのまま放置しておくと、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍・胃がんなどを引き起こします。
胃液は、食べ物を消化する消化酵素としての働きと同時に、強い酸を利用して外界からの細菌が侵入するのを防ぎます。
したがって、強酸性のなかではどんな生物も生息できないとされてきましたが、昨今の研究によって、ピロリ菌は胃の中でも生息できるということが分かりました。
またピロリ菌は、ウレアーゼというアルカリ性アンモニアを生成する酵素を持っていて、それを身に纏うことで胃酸を中和し、殺菌作用から逃れられ、強酸性の胃の中でも生息できる特性を持ち合わせています。

ピロリ菌感染について

ピロリ菌感染についてピロリ菌の主な感染経路として挙げられるのは、経口感染です。
大人から赤ちゃんへの口移しや糞便に汚染された食べ物や飲み水によって感染すると考えられています。
このように、衛生環境がピロリ菌の感染に関係していることが分かっています。
よって、発展途上国におけるピロリ菌の感染者が多く見られるのも特徴です。
私たち人間には、病原体を排除する免疫システムがあるので、体内に侵入したすべての病原体が生存できるというわけではありません。
ピロリ菌が、胃の中で殺菌されずに生息できるかどうかは、その人の胃の酸性度と免疫力の強弱に左右されます。
したがって、胃酸の分泌が十分で免疫機能の高い成人がピロリ菌に感染するのは稀です。
逆に、胃酸の生産力が未熟かつ免疫機能が不十分な幼児期のほうが、ピロリ菌に感染する可能性が高いとされています。

ピロリ菌の感染状況

ピロリ菌感染経路の多くは、飲み水を介する感染とされています。
そのため、水道水の整備が行き届いていなかった時期に幼少期を過ごした年代は注意が必要です。
日本においては、70歳以上の方で60%、60歳代で50%、40歳代で25%、30歳代で15%、20歳代では7%、中学生以下では5%以下の方が感染しています。
衛生環境が整っている日本では、近年のピロリ菌感染者は少なくなってきていますが、いまだ3600万人の方がピロリ菌に感染しているとされています。

ピロリ菌の症状

ピロリ菌の主な症状は、胃炎が持続し、慢性胃炎に進行していきます。
ピロリ菌に感染すると、胃が炎症を起こし、慢性胃炎から徐々に病状が進行し、胃が荒廃していきます。
知らずしらずのうちに胃炎が悪化していき、さまざまな病気を患うことが多く、ごく少数の方に、胸焼けや吐き気、嘔吐、食欲不振、胃もたれの症状が現れます。

一方で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎、胃がんの患者さんのほとんどはピロリ菌に感染しています。
よって、ピロリ菌が胃や十二指腸の炎症、がんの発生に関係しているとも考えられています。
ピロリ菌に感染したら、除菌治療で感染を完全に断ち切らない限り、胃炎の症状は持続していきます。
ピロリ菌の除菌治療をすることで、胃や十二指腸の病気を発症しにくくなり、胃や十二指腸潰瘍の再発を抑えて胃がんのリスクを軽減できます。
現在では、ピロリ菌感染が判明したら、積極的に除菌治療をおすすめしています。

ピロリ菌と胃がんの関係

ピロリ菌に感染すると全員が胃がんになるわけではありませんが、ピロリ菌感染者は胃がんのリスクが約3~5倍にもなると分かっています。
また、ピロリ菌に感染すると、胃炎から慢性胃炎を起こし、びらんと再生を繰り返しながら、次第に胃粘膜を萎縮させてしまいます。
この状態が長く続くことで、胃全体に炎症が広がり、胃粘膜や胃液、胃酸などを分泌する組織が減少し、胃粘膜の萎縮が進行することで胃がんを引き起こします。

ピロリ菌に感染した場合は、除菌治療をすることで発がんリスクをさげることができますが、未感染者の方に比べると発がんリスクは高いため、除菌終了後も定期的に胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

ピロリ菌検査方法

尿素呼気試験

診断薬錠剤1錠を服用し、服用する前後の呼気を集めて診断します。
ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素が尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する特性を利用した検査です。
ピロリ菌がいれば、診断薬から二酸化炭素が発生し、血液中に取り込まれ、最後は呼気として排出されるのを利用しています。
ピロリ菌感染診断や除菌判定にも利用可能です。検査時間は約30分です。

抗体測定検査

血液や尿を採取して、血中や尿の中の抗体の有無を調べる方法です。
ピロリ菌に感染すると、病原体から身体を秒後する抗体(たんぱく質)を作る特性を利用した方法です。
検査は簡単で小児にも検査可能ですが、除菌判定には不向きなため、除菌治療後の感染診断にも不向きです。

ピロリ菌の除菌法

除菌治療は、胃酸分泌を抑える胃薬と抗菌薬2種類を用いて行います。
除菌成功率は約80%台です。
1回目の1次除菌に失敗した場合、2次除菌を行います。2次除菌の成功率は95%以上となり非常に成功率が高いものとなります。

1.除菌治療の副作用

除菌薬を服用すると、腸内細菌のバランスが崩れるため、下痢や軟便が起こりやすくなります。
副作用が起こること自体わずかですが、除菌薬が身体に合わない場合、かゆみや発疹、発赤が現れます。
また、稀に口の中が苦く感じたり発熱が起きることもあります。
いずれも、除菌治療を行ったあとに体調が悪くなった場合は、速やかにご相談ください。

2.除菌の際の注意点

必ず用法、容量を守って服用してください。
薬の飲み忘れや自己判断で中断するのは、治療の成功率を著しく低下させます。
さらに、ピロリ菌が抗菌薬の耐性を得てしまうため、今後2次除菌を行う場合の治療効果を下げてしまいます。
1次除菌治療の成功率は、90%を割り込んでいるので、除菌判定検査を必ず受けましょう。
1次除菌に失敗した場合は、引き続き2次除菌治療を行います。

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